オンライン・システム・ニュースレター No.70 (2000.3.17)


目録所在情報サービスの今後の展開


学術情報センター研究開発部教授
宮澤 彰

1. はじめに

多言語化の次のNACSIS-CAT/ILLの将来像について書いてくれ,と「オンライン・システムニュースレター」の担当から頼まれた。このタイトルでの発行も今号が最後で,なにかをということらしい。もともとオンラインサービスが目録システムしかなかった時代に,目録担当者への連絡用として始まり(直接使うことはほとんどないが,旧CATの呼び出しコマンドはONLINEである),NACSIS-IR等のサービスが始まったときにはタイトル変更も検討されたが,同種のものが他に発行されなかったこともあって,そのままのタイトルで残った。(学総目を編集している立場として,タイトル変遷は少ないほうがよい)。タイトルバックに薄くはいっているNACSIS-CATの文字は,「NACSIS-CATニュースレター」にタイトル変更するための布石であったとの説がある。(NACSIS-CATがだんだん濃くなって,オンラインシステムがだんだん薄くなって,いつか消えたら,どこからタイトル変更したことになるのだ,という冗談もあった)。

さて,ところで,長期のサービス開発計画が,公式に決められているわけではない。したがって,気楽に,夢や希望をまじえて展望してみることにする。



2. 国際展開



現在NACSISは米国のユティリティであるOCLC及びRLGと,ILLメッセージングシステムの相互接続を開発している。これを可能にしたのが,技術的にはISOのILLプロトコルである。というよりは,ILLプロトコルを多くのユティリティ,図書館システムが実装するようになったことによる。この実装によって何が可能になるかというと,OCLCやRLGに接続してILLサービスを行っている図書館に対して,NACSIS参加館から,NACSIS-ILLシステムを通じて,ILL申込みをすることができるようになる。また,その逆である向こうの参加館からNACSIS-ILL参加館に対するILL申込みもできるようになる。ただし,これはシステムレベルの話であって,ILLポリシーの話はまた別である。この点については,現在国大図協で米国との試行プロジェクトを進めている。他に,現在つないでいるBLDSCに対する申し込みもILLプロトコル使用に変更する予定である。これによって現在システム外で行っているステータスチェック等が,NACSIS-ILLを通じて可能となる。


  NACSIS-CATのほうでは,OCLCやRLG,あるいは他のユティリティ等をオンラインで参照ファイルのように使用する可能性がある。これも,技術的な点では情報検索応用プロトコル(ISO23950,JISX0807であるが,米国規格ANSI Z39.50として広く知られている。)の普及によって可能になってきた。既にRLGがドイツ図書館との間でオンライン利用を可能としている。これまた,技術的に可能となっても(レコード形式の変換,文字コード等の点で技術的問題が若干残っているが),料金や,お互いのメンバーシップ,所蔵情報の持ち方などの社会的,経済的問題を解決する必要がある。


ただ,システムやサービスのグローバル化は,米国のみならず,ヨーロッパ,日本でも大きな流れとなっており,その中での情報の流れを考えれば,これらの問題点を解決し,実現をさぐることは,当然の目標と考えている。



3. ネットワーク上の資源



総合目録とネットワーク上の資源の関係は,未解決といえよう。今年度の総合目録小委員会において,ようやく電子ジャーナル類の当面の扱いに結論を出したが,より一般的な,電子図書館資料,Webのページ,ネットワーク出版物を目録の世界でどのように扱っていくかは,結論が出ていない。より大きくは,目録の世界で扱うべきなのか,他の手段によったほうがよいのかも含め,未解決の大問題である。


一般的な索引データベース問題ということができるが,この問題は結局ネットワーク上での「出版」にあたる行為の社会的慣習が定まらないと,具体的対応が取れないという問題でもある。例えば15世紀ヨーロッパの出版物(いわゆるインキュナブラ)の段階で,目録規則を検討してもほとんど役には立たなかったろうと想像される。少なくとも1990年代の我々は,同じような状況にあって,何をすべきか考えているところと言えよう。もちろん,Dublin Coreのように,その中でイニシャティブ(この言葉もグローバル化と同様に現代米国のはやり言葉であるが)を発揮していこうという動きもあり,それらの社会情勢を見つつ対応することが必須となる。


  もう少し身近な話にすると,Webcatでの所蔵表示と電子図書館のリンクといった展開が考えられる。ディジタル化されて一般アクセス可能な資料の場合,所蔵情報にURLを入れておくことにより,Webcatの所蔵表示からそこへのリンクをはることができる。ここまで,Webが一般化してくるとWebcatの所蔵表示で図書館名をクリックしたら住所と電話番号しか出てこなかったというのは,いかにも期待はずれに思えるが,資料そのものが表示されれば納得してくれるだろう。(もっとも,作っている図書館員側の努力はあまり見えずに,あたりまえとしか思ってくれない可能性は大である)。


いずれにしても,所蔵情報は資料にアクセスするための情報で,アクセスの方法が変化・多様化すれば,対応していかなければならないのは当然である。



4. 目録作成ソースの多様化



現在のNACSIS-CATは古典的な共同分担目録モデルに基づいている。要するに,各図書館にカタロガがいて,ローカルな目録を作成している,それをオンライン総合目録の作成作業と同期して行うことにより,全体としての作業量が減るという考え方である。ところが,ここまで書誌ユティリティが一般化したことと並行して,米国でも目録作成の専門性,重要度は減り,いわゆるアウトソーシングも多くなってきたといわれている。この傾向は日本でも同様に進んでいると見ている。このような傾向の中での目録作成のシステムは,もう一度見直されてもよいだろう。


ある本についての書誌データは,世界中で1回作成すれば,あとはそれを利用できる,という書誌コントロールの理想は,書誌ユティリティの普及と,前述の国際化とによって,ようやく現実のものとなりつつある。この,1回の書誌データ作成を,どのような資料について,だれが行うか,そして,NACSIS-CATの中でそれをどのように利用できるようにするかという問題を見直してもよいと思う。例えば,日本の場合,商業的に流通する大手の出版社の(カレントな)本は,TRCなどいわゆる流通MARCによってカバーされる率が高まっている。本の流通システムおよび図書館の資料管理システムと同期を取れば,いわゆる目録作業以前に書誌・所蔵情報の全体が確定していることも可能で,より合理化した総合目録作成が可能かもしれない。


ただ,一つの大学図書館のサービスする資料の100%が,そのような方法でプロセス可能になるのは,近未来にはないだろう。したがって,現在のオンライン共同目録作成モデルを保存しつつ,共存して,他のモデルでの総合目録作成,維持,管理のシナリオも開発していく必要があるだろう。



5. 統合的な情報サービ



このNACSIS-CATシステムの構想が始まった時代から,筆者はいわゆる2次情報データベースと,総合目録データベースの統合的なサービスができないか,と考えていた。その後何度かこの構想はセンター内で検討されたが,必要な情報をだれがどのように作成,維持できるかという技術的問題,サービスシステムの開発上の技術的問題から見送られてきた。


  しかし,最近のWebの普及は少なくとも,サービスシステムの開発に,新たな可能性を産み出している。NACSIS-CATでは,いわば特殊な操作であったLOOKUPや(こちらはめったに使われないが)TURNコマンドの操作が,ハイパーリンクとマウスクリック操作によりごく日常的なインタフェースになってしまった。前にも述べたように,所蔵館名をクリックすればその資料が見れるのはあたりまえ,という感覚を持ったユーザが増えてきた。実際多くの情報サービスでは,こういった機能を利用して優れたユーザインタフェースを提供している。NACSISもその情報サービスを統合的に見直して,設計することは十分に意味がある。もっとも,これは作成された総合目録データベースの利用の話であって,データベース作成システムとしてのNACSIS-CATの話ではないかもしれない。



6. おわりに



NACSIS内で進行中のこと,検討されていること,個人的に夢想していることとりまぜて,引っ越しのどさくさの中,大急ぎで書いた文章である。茗荷谷の建物で書いた最後の仕事となった。これを書いている現在,すでにLANはとまりワークステーションも動かず,サブノートパソコンで原稿を書いている。書き上げたものはメールも使えないので,フロッピー渡しになるだろう。ということで,急ぎ仕事のいいかげんな話と思って読んでもらえれば幸いである。